浸藍水

これは、藍染めの水です。
藍は、板藍根として、清熱解毒の作用があります。
現在ではインフルエンザなどウイルス性の疾患に多用されています。
藍染めの水ですから、当然、板藍根と同じ作用があります。
効能は、徐熱、解毒、殺虫、喉の痛みとつかえに良いとあります。
本草綱目には、その後に面白いエピソードが書かれています。
「昔、ある人が酔っぱらって、田んぼの水を飲んだら、間違って蛭(ヒル)も一緒に飲み込んでしまった。
 胸やお腹が張り痛み、顔が黄色くなった。色々な医者にみてもらったが効果が無い。
 ある宿屋で、非常に口が渇いていたので、間違えて藍染めの水を飲んでしまった。
 そうすると、何回も下痢をした。下痢の中には無数の蛭が入っていた。
 病も頓挫に癒えた。」
とあります。蛭は活血薬ですが、さすがに生きたまま飲み込んではいけませんね。

妊娠と漢方薬

なかなか妊娠しない方で、漢方薬を飲みたいという方がとても多くなっています。
その場合の注意点をいくつかあげてみます。
漢方薬はホルモン剤のような即効性はありません。
それを飲んだからといって、すぐにその周期から基礎体温が綺麗になるとは限りません。
また、子宮や卵巣は目には見えない部分ですから、変化も解りづらいものがあります。
ですので、体質にあった漢方薬をまずは3ヶ月は続ける事が大切です。

卵胞は赤ちゃんの頃から卵巣にあり、排卵の順番を待っています。
順番が来ると卵胞は膨らみ始めます。
そして膨らみ始めてはら排卵すまで、何と6ヶ月半もかかっています。
始めの4ヶ月くらいは、FSHの影響をうけない自発的な成長です。
後の3ヶ月くらいはFSHの刺激により卵胞は膨らんでいきます。
この3ヶ月が卵胞の成熟にとても大切な時期です。
ですから、卵を良くしたいなら、最低3ヶ月かかると言う事です。
周期療法の場合で、今月は夫婦生活のタイミングがとれなかったからといって、高温期の漢方薬を飲まない場合があります。
しかし、高温期用の漢方薬はその周期の為だけでなく、排卵の順番を待っている全部の卵胞の為にあります。
ですから、なるべく忘れないように飲む事が大切です。

また、すべてが周期療法で解決する訳ではありません。
排卵障害のある場合、多嚢胞性卵巣、高プロラクチン、卵管の閉塞、子宮内膜症、子宮筋腫、内膜のポリープ、受精障害、着床障害、不育症など
周期療法があまり適さない場合もあります。
このような場合は、中医学的には、痰湿や瘀血というような、体内の汚れや、気の流れの問題が大きいため、汚れを綺麗にしたり気の流れを改善したりするような漢方薬を使っていきます。

不妊症のご相談をされる時は、ぜひ、不妊症に詳しいお店を探して見て下さい。

明水

明水は、淡水の大きな貝の中の水です。
月明かりの夜、これを捕まえて中の水2-3合を得ます。
目を洗えば、目がはっきり見えるようになり、これを飲めば、安神作用があり、子供の煩熱を冷ますとあります。
月明かりの夜にとらないと効果が無いかというと多分そうではなくて、暗い中での作業のため月明かりがあった方が良いという事でしょう。
では、昼にとったらどうなるかというと、それは解りません。
何かきっと夜の方が良い理由があるのでしょう。

冬霜

冬霜があるので、夏霜があるかというとそうでなくて、冬霜はただの霜です。
霜柱をとって、鳥の羽で掃いて綺麗にし、瓶に保存します。
甘、寒、無毒。
「これを飲むと酒熱を解す。酒を飲んで顔や耳が赤い時、これを飲むとたち所に赤味が消える。」
今なら氷水でしょうけど、冷蔵庫が無い時は、それも良いかも。
夏のアセモや、脇の下が赤く腫れる場合に、淡水貝の殻の粉とまぜて使えばたち所の効果がある、とも。
さらには、発熱、マラリア、鼻づまりなどにも応用されています。
しかし、所詮水ですから、そんなにたいした効果は期待出来ないでしょうね。

腊雪

中国語で腊月というと、旧暦の12月を意味します。
『本草綱目』では、冬至の後、三回目の戊(つちのえ)を腊と言うと書かれていますから、まあ旧暦12月ころでしょう。
野菜や麦の虫を殺す、つまり農薬のような役目をする。
密封しておけば、10年腐らないと。
また果物をつけておくと虫がわかない。
などと書かれています。
本当にそんな効果があるのかかなり疑問です。
効能も「一切の毒を解す、流行している疫病、子供が熱で発狂するような場合、結石、お酒の後の熱、黄疸を治す。」
とあります。
やはりちょっと無理があります。
『本草綱目』は学術的には高い評価があります。
ただ、迷信的な記載もかなりありますから、盲信しない事が大切です。
たとえば雪は六角形なので陰の成数。とかかれています。
陰陽の考えでは奇数は陽、偶数は陰です。
その中でも陰の代表が6で、陽の代表が9となります。
占いなどでは多用されている理論ですが中医学としては必ずしもあてはまりません。

夏氷

氷は太陰の精。
冷蔵庫の無い頃は、山の中の氷穴などに保存したようです。
『本草綱目』では、甘、冷、無毒となっています。
生薬は、普通、寒、凉、平、温、熱 などで冷というのは無いのですが、ここでは冷となっています。
効能は、煩熱を去り、喉の渇きをとり、暑毒を消す。熱にうなされて意識がもうろうとする時、
ひとかたまりの氷を胸の中央に置くと良い。
また酒毒を解する。
夏の暑い時に冷たい氷を食べる事は季節に相反している。
そうすると、腹中の冷と熱が争って病気になる。
だから、夏の冷たいものはほどほどにすべきである。
宗の時代の微宗は、冷たいものを食べ過ぎて、脾の病気になった。
国家の医師では治療できず、楊界という人が大理中丸(脾胃を大いに温める薬)で治療した。
などと書かかれてあります。
もっともな事です。

神水

『本草綱目』では、「5月5日の午の刻(昼の12時)に、雨がふっていたら、急いで竹を切ると中に神水がある。」
この部分、何か神秘的な雰囲気をかもしだしています。
何故、5月5日、限定1日限りなのか?
きっと、少しくらいずれていても、大丈夫でしょうね。

効能 胸やお腹に、積衆(しこり、かたまり)がある時。
   あるいは寄生虫がいる時にイタチやカワウソの肝の丸薬と一緒に飲ませる。
   また、「清熱化痰、定惊安神」とあります。
   この部分は竹の汁である竹瀝に似ています。

半天河

半天河は、竹垣とか、木の穴などにたまった水の事です。上池水とも言います。
気味は、甘、微寒。無毒。
鬼精を殺し、恍惚や妄語に良いらしい。
「これを飲ませる時に、何をのませたか患者さんに言わない」となっています。
内容を知ってしまうと効果が薄れるというなら、プラセボ効果でしょうか?
竹瀝水なら化痰作用があるので、恍惚や妄語に良い可能性がありますが。
槐の木の半天河は、諸風、悪創風、掻疥痒に良いとなっています。

流水

流水は、河の水です。大きな河の水も小さな川の水もどちらも流水です。
流水の中で、大きな河の水を千里水、または東流水といいます。
中国では大きな河は皆、東に流れるので東流水といいます。
河の上流で流れが急な部分を急流水といい、「急速下達」の働きがあり二便を通じる時に使います。
これは、ふつうの河の流れの中の水なので順流水ともいいます。
これに対して逆流水というのがあります。河の流れに逆らった水で、長江の大逆流とか、洪水なとで河が氾濫したようなものです。
その性質は、下から上に向かうので、吐痰などに使います。
ただ、多分に迷信的な部分もあると思います。

チャイナビュー 232号

チャイナビューの232号が来ました。

今回の中国探訪は「レゴン芸術 タンカ」です。
タンカは仏像画の一種です。
漢方の知恵袋は「耳鳴り・難聴」対策です。
只今、当店で漢方をお買い上げの方に差し上げています。

甘爛水

甘爛水とか、労水というものがあります。
これは、おおきな桶などに水を入れたあと、ひしゃくなどでその水をくみ、
上から注ぎ、またくんでは注ぐという事は繰り返していくと、水の表面に細かい泡が立つようになります。
これを甘爛水または労水といいます。
中国の水は硬水なので、このようにすると水を軟らかくすると考えられます。
補腎の作用があると言われていますが、ちょっと怪しいです。
それよりは、軟水なので胃腸の負担が少なく、薬を煎じるのには良い水と思います。
今の日本の水、とくに浄水機をつけている場合は、みなこの甘爛水と同じ意味になります。

井泉水

井戸の中の水です。
朝一番に汲んだ水を「井華水」といって、効果が一番良い物です。
また、井戸の水脈によっても水質は大きく異なります。
なるべく、遠くから来る水脈が良いとされています。
近くの湖や河が水脈のものは、これに継ぐ。
都市部で汚染されたものは飲まない方が良いと書かれています。
遠くから来る水脈が良いのはミネラルが多いという事でしょうか。

季節水

中医学ては水をとても重視します。
ホジュンというドラマでも、初めの方に水を極める話がありました。

節季水
『本草綱目』によれば、季節に応じて水も性質を変えるようです。
「水之気味、隨之変遷、此及天地之気候相感」と書かれています。
立春、清明の二節の水は神水と良い、諸風、脾胃虚損などに効果がある丹薬を練る時に使います。
寒露、冬至、小寒、大寒の四節の水で、五臓を滋補し、痰火、積衆、虫毒に効果がある丹薬を練ります。
立秋の日の五更(明け方ころ)の井華水は、老いも若きも、これを飲んでおくと、マラリア、泄利など百病を寄せ付けない。
重午(5月5日)のお昼ころの水でマラリア、赤痢、金創、虫毒などに効果がある丹薬を練ります。
小満、芒種、白露の三節の水はみな有毒で、製薬や造酒、食物などを作るとみな腐敗しやすくなります。人が飲むと、胃腸の病気になります。

と書かれています。最後の一文はとても疑問です。
ただ、丹を練る時のお水も季節を考えているというのはびっくりです。
水以外の要素でも、丹を練る季節によって効果が変わるという事はありそうですね。

当帰身と当帰尾

日本の当帰はあまり大きくありませんが、中国の当帰はものすごく大きいものです。
大きな当帰ですから、本体の部分と、根っこのはしっこの部分では作用が違います。
本体の部分を当帰身といって、甘味がつよく、血を補う作用がとても良いものです。
根っこの細い部分は当帰尾。辛みがあり、活血作用がよくなります。
老中医は処方箋をかく時に、当帰身と当帰尾を使い別ける事がよくあります。
一度、病院の調剤室を見学に行きました。
そこで当帰身と当帰尾について処方箋を配合している若い薬剤師に聞くと、特に区別していないという事でした。
ただ、処方箋に当帰身とある時はなるべく大きめな所、当帰尾とある時は底にたまった細かいものを配合すると言っていました。
老中医の深い思いは、なかなか全部は若い薬剤師には伝わらないようでした。

心筋梗塞と弁証

「中医雑誌」に面白い記事がありました。
造影剤で冠状動脈の狭窄がみられた405人の体質を判断しています。
その中で、
 瘀血があった人 66.4%
 痰濁があった人 43.7%
 気虚があった人 34.8%
 陰虚があった人 15.1%
 気滞があった人  8.6%
 寒凝があった人  7.4%
 陽虚があった人  7.2%
という結果でした。
兼証がありますから合計は100%にはなりません。

この結果を見ますと、瘀血と痰濁はまあ、予想通り。意外に多いのが気虚。
そして意外に少ないのが陽虚と寒凝でした。
そうすると「冠元顆粒」「星火温胆湯」「麦味参顆粒」が心筋梗塞予防の3点セット?
実際の臨床はもっと複雑ですから、そう単純には行かないでしょうね。

 

酸棗仁

サネブトナツメの種を酸棗仁といいます。
主に肝、心に入り、安神寧神作用があります。
ですので、肝や心の気虚や血虚で、寝付きが悪い場合によく使われます。
面白いのは、「酸棗仁は炒って使うと、不眠に良くきき、そのまま使うと嗜眠(昼の眠気)によく効く」という説です。
最近の動物実験では、炒って使っても、そのまま使っても催眠作用がある事が解りました。
ただ、酸棗仁を炒ってみると、何とも言えない、良いにおいがします。
臭いをかいでいるだけで、眠くなる気がしてくるほどです。
また、炒った酸棗仁は香ばしく、のみやすいものです。
薬効成分とは関係が無いのかも知れませんが、味や臭いのリラックス作用は炒った方が勝ると思います。

竜眼肉

中国の南の方に行くと、茶色くて、直径2cmくらいの硬い木の実を売っています。
ちょっと茘枝に似ていますが、色はもっと薄くて、茶色というよりベージュ色。
茘枝より小粒で、表面も茘枝と違ってつぶつぶではありません。
割ってみると、茘枝と同じような果肉が入っていて、とても甘くて美味しいものです。
家内が大好きで、見つけるとすぐに買ってしまいます。
中医学には養心安神作用があり、眠りを誘うものです。
漢方で使う龍眼肉は生のものではなくて、乾燥させたものです。ちょうどレーズンのような感じです。
ただ、実際には竜眼肉をいくら食べても、眠くはなりません。
やはり柏子仁とか、酸棗仁、蓮子芯などと配合して初めて効果が出るものと思います。

石膏

生薬の中には鉱物性のものもあります。
その代表が石膏です。
現代中医学では石膏はとても冷やす作用が強く「大寒」とされています。
しかし、神農本草経では微寒で、清代の名医、張錫純も石膏はとても穏やかなものとしています。
そして、数百グラムという単位で使っています。
確かに石膏の作用は穏やかなものと思います。ただ、鉱物のものは水に溶ける量は限られています。
ある一定以上は、飽和して水には溶けません。
そうなると、水に溶けない部分で、石膏の微粉末などが煎じ液に拡散していると考えられます。
それなら、いっそ初めから微粉末にしてから少量とかし込む方が効果が良いようにおもいます。
ただ、そのような方法は今のところ行われていないようです。

蓮ほど、色々な部位が使われる生薬はありません。
まず、蓮根。これは補血作用があります。
また、蓮根の節の部分は藕節といって止血作用があります。
花托は蓮須といって収斂作用があります。
蓮の実は蓮肉といって下痢を止めたり、精神を安定させます。
また蓮肉の中の芽は、蓮子芯。清熱作用や興奮を静める作用があります。
蓮の葉は、荷葉と言います。解暑の作用があります。
こんなにも沢山の部位でそれぞれの効能が違うものは蓮をおいて無いでしょう。

当帰について

日本で作られている漢方薬でも、その原料の生薬は殆ど中国から輸入されています。
ただ、例外があります。
それは当帰です。
当帰は、日本で栽培されているものと、中国で栽培されているものは植物の種類が違います。
日本薬局方では、日本産の当帰を記載して、中国産の当帰は記載されていません。
この為、法律的に当帰はどうしても日本産の当帰を使う必要があります。
もし、中国産の当帰を使いたい場合は、今までとは別な医薬品の認可が必要になってしまいます。

中国産の当帰と日本産の当帰を比べると、多少、味の違いもあります。
補血の作用は、やや日本産の方が良いように思いますが、潤いを与える作用は中国産の方が強いようです。
中国産の当帰は、よく便が柔ら無くなったり、時に下痢したりします。
中国の研修の時に「下痢気味の人は当帰を使わないように」という話が出ます。
しかし、日本の当帰で下痢してしまうという人は殆どありません。