車轍中水

赤龍浴水ほどではないけども、こちらも摩訶不思議な水です。
その名のとおり、車のわだちの凹みに溜まった水です。
5月5日に汲むと良いようです。
牛の蹄の跡に溜まった水でも良いとの事です。
どちらもあまり飲みたくないです。
主治は、癧癰風となっています。瘰癧とか、癰疽などでしょうか。
風というのは、痙攣を起こしている状態かもしれません。
とても効くとは思えない物です。

地漿

黄土に穴を掘り、水を入れかきまぜたものを汲んで、しばらく放置して透明になったもの。
黄土の成分が含まれていると思われます。
効能としては笑い茸を食べて笑いが止まらない人に良いとなっています。
本当に効くのでしょうか?
効いたら凄いですね。

熱湯

当たり前ですが、熱湯は身体を温め、経絡を通じます。
「百沸湯」とも「太和湯」とも言います。
霍亂(コレラのような吐き下し)で筋肉が痙攣するものを治すとあります。
薬ではないですが、場合によっては起死回生の効果もあるかも知れません。
なぜか、本草綱目では、「中途半端に沸騰したものを飲むと元気を損なう」とあります。
そんなもんでしょうか?

生熟湯

別名、陰陽水。
これは、すごい水です。
作り方は簡単で、熱湯と冷たい水を混ぜたものです。
熱湯は陽、冷たい水は陰ですから、これをまぜて陰陽を調和する働きがあります。
陰陽が通じないと、清気は昇らず、濁気は降りないため、吐き下しがおこります。
この時に陰陽水で、陰陽を調和されると、清気が昇り、濁気が降ります。
中医学の理論では、このようになります。
ただし、実際の効果が何処まであるのかは、私には解りません。

漿水

漿は酢の事です。
炊飯した粟や米を冷水に5-6日浸しておくと酸っぱくなり表面に白い泡のようなものが浮かんできます。
李と一緒にとると、吐き下しになるので、一緒にとらないようにと、注意書きがあります。
胃の働きを良くして、喉の渇きを止め、吐き下し、消化不良に良いとあります。
お粥にして夕暮れに飲むと、よく眠れるそうです。
また美白の効果があると書かれています。
発酵食品はやはり身体に良いのですね

磨刀水

今回は磨刀水です。
その名のとおり、刀のとぎ汁です。
効能は、尿が出ない時に使います。
あと、肛門が腫れて痛む場合も良いとあります。
毒蛇にかまれた時にも良いようです。
耳の中が急に痛い時、耳に少し注ぎ込むといいと書かれています。
効能の程は解りませんが、現代では全く使われていません。

浸藍水

これは、藍染めの水です。
藍は、板藍根として、清熱解毒の作用があります。
現在ではインフルエンザなどウイルス性の疾患に多用されています。
藍染めの水ですから、当然、板藍根と同じ作用があります。
効能は、徐熱、解毒、殺虫、喉の痛みとつかえに良いとあります。
本草綱目には、その後に面白いエピソードが書かれています。
「昔、ある人が酔っぱらって、田んぼの水を飲んだら、間違って蛭(ヒル)も一緒に飲み込んでしまった。
 胸やお腹が張り痛み、顔が黄色くなった。色々な医者にみてもらったが効果が無い。
 ある宿屋で、非常に口が渇いていたので、間違えて藍染めの水を飲んでしまった。
 そうすると、何回も下痢をした。下痢の中には無数の蛭が入っていた。
 病も頓挫に癒えた。」
とあります。蛭は活血薬ですが、さすがに生きたまま飲み込んではいけませんね。

明水

明水は、淡水の大きな貝の中の水です。
月明かりの夜、これを捕まえて中の水2-3合を得ます。
目を洗えば、目がはっきり見えるようになり、これを飲めば、安神作用があり、子供の煩熱を冷ますとあります。
月明かりの夜にとらないと効果が無いかというと多分そうではなくて、暗い中での作業のため月明かりがあった方が良いという事でしょう。
では、昼にとったらどうなるかというと、それは解りません。
何かきっと夜の方が良い理由があるのでしょう。

冬霜

冬霜があるので、夏霜があるかというとそうでなくて、冬霜はただの霜です。
霜柱をとって、鳥の羽で掃いて綺麗にし、瓶に保存します。
甘、寒、無毒。
「これを飲むと酒熱を解す。酒を飲んで顔や耳が赤い時、これを飲むとたち所に赤味が消える。」
今なら氷水でしょうけど、冷蔵庫が無い時は、それも良いかも。
夏のアセモや、脇の下が赤く腫れる場合に、淡水貝の殻の粉とまぜて使えばたち所の効果がある、とも。
さらには、発熱、マラリア、鼻づまりなどにも応用されています。
しかし、所詮水ですから、そんなにたいした効果は期待出来ないでしょうね。

腊雪

中国語で腊月というと、旧暦の12月を意味します。
『本草綱目』では、冬至の後、三回目の戊(つちのえ)を腊と言うと書かれていますから、まあ旧暦12月ころでしょう。
野菜や麦の虫を殺す、つまり農薬のような役目をする。
密封しておけば、10年腐らないと。
また果物をつけておくと虫がわかない。
などと書かれています。
本当にそんな効果があるのかかなり疑問です。
効能も「一切の毒を解す、流行している疫病、子供が熱で発狂するような場合、結石、お酒の後の熱、黄疸を治す。」
とあります。
やはりちょっと無理があります。
『本草綱目』は学術的には高い評価があります。
ただ、迷信的な記載もかなりありますから、盲信しない事が大切です。
たとえば雪は六角形なので陰の成数。とかかれています。
陰陽の考えでは奇数は陽、偶数は陰です。
その中でも陰の代表が6で、陽の代表が9となります。
占いなどでは多用されている理論ですが中医学としては必ずしもあてはまりません。

夏氷

氷は太陰の精。
冷蔵庫の無い頃は、山の中の氷穴などに保存したようです。
『本草綱目』では、甘、冷、無毒となっています。
生薬は、普通、寒、凉、平、温、熱 などで冷というのは無いのですが、ここでは冷となっています。
効能は、煩熱を去り、喉の渇きをとり、暑毒を消す。熱にうなされて意識がもうろうとする時、
ひとかたまりの氷を胸の中央に置くと良い。
また酒毒を解する。
夏の暑い時に冷たい氷を食べる事は季節に相反している。
そうすると、腹中の冷と熱が争って病気になる。
だから、夏の冷たいものはほどほどにすべきである。
宗の時代の微宗は、冷たいものを食べ過ぎて、脾の病気になった。
国家の医師では治療できず、楊界という人が大理中丸(脾胃を大いに温める薬)で治療した。
などと書かかれてあります。
もっともな事です。

神水

『本草綱目』では、「5月5日の午の刻(昼の12時)に、雨がふっていたら、急いで竹を切ると中に神水がある。」
この部分、何か神秘的な雰囲気をかもしだしています。
何故、5月5日、限定1日限りなのか?
きっと、少しくらいずれていても、大丈夫でしょうね。

効能 胸やお腹に、積衆(しこり、かたまり)がある時。
   あるいは寄生虫がいる時にイタチやカワウソの肝の丸薬と一緒に飲ませる。
   また、「清熱化痰、定惊安神」とあります。
   この部分は竹の汁である竹瀝に似ています。

半天河

半天河は、竹垣とか、木の穴などにたまった水の事です。上池水とも言います。
気味は、甘、微寒。無毒。
鬼精を殺し、恍惚や妄語に良いらしい。
「これを飲ませる時に、何をのませたか患者さんに言わない」となっています。
内容を知ってしまうと効果が薄れるというなら、プラセボ効果でしょうか?
竹瀝水なら化痰作用があるので、恍惚や妄語に良い可能性がありますが。
槐の木の半天河は、諸風、悪創風、掻疥痒に良いとなっています。

流水

流水は、河の水です。大きな河の水も小さな川の水もどちらも流水です。
流水の中で、大きな河の水を千里水、または東流水といいます。
中国では大きな河は皆、東に流れるので東流水といいます。
河の上流で流れが急な部分を急流水といい、「急速下達」の働きがあり二便を通じる時に使います。
これは、ふつうの河の流れの中の水なので順流水ともいいます。
これに対して逆流水というのがあります。河の流れに逆らった水で、長江の大逆流とか、洪水なとで河が氾濫したようなものです。
その性質は、下から上に向かうので、吐痰などに使います。
ただ、多分に迷信的な部分もあると思います。

甘爛水

甘爛水とか、労水というものがあります。
これは、おおきな桶などに水を入れたあと、ひしゃくなどでその水をくみ、
上から注ぎ、またくんでは注ぐという事は繰り返していくと、水の表面に細かい泡が立つようになります。
これを甘爛水または労水といいます。
中国の水は硬水なので、このようにすると水を軟らかくすると考えられます。
補腎の作用があると言われていますが、ちょっと怪しいです。
それよりは、軟水なので胃腸の負担が少なく、薬を煎じるのには良い水と思います。
今の日本の水、とくに浄水機をつけている場合は、みなこの甘爛水と同じ意味になります。

井泉水

井戸の中の水です。
朝一番に汲んだ水を「井華水」といって、効果が一番良い物です。
また、井戸の水脈によっても水質は大きく異なります。
なるべく、遠くから来る水脈が良いとされています。
近くの湖や河が水脈のものは、これに継ぐ。
都市部で汚染されたものは飲まない方が良いと書かれています。
遠くから来る水脈が良いのはミネラルが多いという事でしょうか。

季節水

中医学ては水をとても重視します。
ホジュンというドラマでも、初めの方に水を極める話がありました。

節季水
『本草綱目』によれば、季節に応じて水も性質を変えるようです。
「水之気味、隨之変遷、此及天地之気候相感」と書かれています。
立春、清明の二節の水は神水と良い、諸風、脾胃虚損などに効果がある丹薬を練る時に使います。
寒露、冬至、小寒、大寒の四節の水で、五臓を滋補し、痰火、積衆、虫毒に効果がある丹薬を練ります。
立秋の日の五更(明け方ころ)の井華水は、老いも若きも、これを飲んでおくと、マラリア、泄利など百病を寄せ付けない。
重午(5月5日)のお昼ころの水でマラリア、赤痢、金創、虫毒などに効果がある丹薬を練ります。
小満、芒種、白露の三節の水はみな有毒で、製薬や造酒、食物などを作るとみな腐敗しやすくなります。人が飲むと、胃腸の病気になります。

と書かれています。最後の一文はとても疑問です。
ただ、丹を練る時のお水も季節を考えているというのはびっくりです。
水以外の要素でも、丹を練る季節によって効果が変わるという事はありそうですね。

当帰身と当帰尾

日本の当帰はあまり大きくありませんが、中国の当帰はものすごく大きいものです。
大きな当帰ですから、本体の部分と、根っこのはしっこの部分では作用が違います。
本体の部分を当帰身といって、甘味がつよく、血を補う作用がとても良いものです。
根っこの細い部分は当帰尾。辛みがあり、活血作用がよくなります。
老中医は処方箋をかく時に、当帰身と当帰尾を使い別ける事がよくあります。
一度、病院の調剤室を見学に行きました。
そこで当帰身と当帰尾について処方箋を配合している若い薬剤師に聞くと、特に区別していないという事でした。
ただ、処方箋に当帰身とある時はなるべく大きめな所、当帰尾とある時は底にたまった細かいものを配合すると言っていました。
老中医の深い思いは、なかなか全部は若い薬剤師には伝わらないようでした。

酸棗仁

サネブトナツメの種を酸棗仁といいます。
主に肝、心に入り、安神寧神作用があります。
ですので、肝や心の気虚や血虚で、寝付きが悪い場合によく使われます。
面白いのは、「酸棗仁は炒って使うと、不眠に良くきき、そのまま使うと嗜眠(昼の眠気)によく効く」という説です。
最近の動物実験では、炒って使っても、そのまま使っても催眠作用がある事が解りました。
ただ、酸棗仁を炒ってみると、何とも言えない、良いにおいがします。
臭いをかいでいるだけで、眠くなる気がしてくるほどです。
また、炒った酸棗仁は香ばしく、のみやすいものです。
薬効成分とは関係が無いのかも知れませんが、味や臭いのリラックス作用は炒った方が勝ると思います。

竜眼肉

中国の南の方に行くと、茶色くて、直径2cmくらいの硬い木の実を売っています。
ちょっと茘枝に似ていますが、色はもっと薄くて、茶色というよりベージュ色。
茘枝より小粒で、表面も茘枝と違ってつぶつぶではありません。
割ってみると、茘枝と同じような果肉が入っていて、とても甘くて美味しいものです。
家内が大好きで、見つけるとすぐに買ってしまいます。
中医学には養心安神作用があり、眠りを誘うものです。
漢方で使う龍眼肉は生のものではなくて、乾燥させたものです。ちょうどレーズンのような感じです。
ただ、実際には竜眼肉をいくら食べても、眠くはなりません。
やはり柏子仁とか、酸棗仁、蓮子芯などと配合して初めて効果が出るものと思います。

石膏

生薬の中には鉱物性のものもあります。
その代表が石膏です。
現代中医学では石膏はとても冷やす作用が強く「大寒」とされています。
しかし、神農本草経では微寒で、清代の名医、張錫純も石膏はとても穏やかなものとしています。
そして、数百グラムという単位で使っています。
確かに石膏の作用は穏やかなものと思います。ただ、鉱物のものは水に溶ける量は限られています。
ある一定以上は、飽和して水には溶けません。
そうなると、水に溶けない部分で、石膏の微粉末などが煎じ液に拡散していると考えられます。
それなら、いっそ初めから微粉末にしてから少量とかし込む方が効果が良いようにおもいます。
ただ、そのような方法は今のところ行われていないようです。

蓮ほど、色々な部位が使われる生薬はありません。
まず、蓮根。これは補血作用があります。
また、蓮根の節の部分は藕節といって止血作用があります。
花托は蓮須といって収斂作用があります。
蓮の実は蓮肉といって下痢を止めたり、精神を安定させます。
また蓮肉の中の芽は、蓮子芯。清熱作用や興奮を静める作用があります。
蓮の葉は、荷葉と言います。解暑の作用があります。
こんなにも沢山の部位でそれぞれの効能が違うものは蓮をおいて無いでしょう。

当帰について

日本で作られている漢方薬でも、その原料の生薬は殆ど中国から輸入されています。
ただ、例外があります。
それは当帰です。
当帰は、日本で栽培されているものと、中国で栽培されているものは植物の種類が違います。
日本薬局方では、日本産の当帰を記載して、中国産の当帰は記載されていません。
この為、法律的に当帰はどうしても日本産の当帰を使う必要があります。
もし、中国産の当帰を使いたい場合は、今までとは別な医薬品の認可が必要になってしまいます。

中国産の当帰と日本産の当帰を比べると、多少、味の違いもあります。
補血の作用は、やや日本産の方が良いように思いますが、潤いを与える作用は中国産の方が強いようです。
中国産の当帰は、よく便が柔ら無くなったり、時に下痢したりします。
中国の研修の時に「下痢気味の人は当帰を使わないように」という話が出ます。
しかし、日本の当帰で下痢してしまうという人は殆どありません。

お米は漢方薬?

実は、あまり知られていませんが、お米も漢方薬です。
「白虎加人参湯」という処方があります。
この中に粳米と言う名前で使われています。
粳米は、うるち米、つまり普通のお米です。
もちごめは糯米といいます。
白虎加人参湯は糯米を使うという説もあるのですが、糯米の性質はかなり膩なので、便秘しやすい陽明病では避けるべきです。
ですから糯米でなく粳米を使うべきです。
さて、白虎加人参湯の中の粳米は必要なものなのでしょうか?
色々な意見があります。
昔は栄養状態が悪かったので、粳米で栄養補給をするという説もあります。
しかし、それなら白虎加人参湯だけでなく色々な処方にもっと粳米があっても良いはずです。
張錫純は、粳米の働きは石膏などの重い生薬が中焦に止まるようにする為といっています。
ちょっと前に甘草の伏火の話をしましたが、少しそれに似ています。
ですので、ふだんお米を食べているから必要無いという事ではありません。
やはり煎じたものと一緒に飲む必要があります。

鶏内金

鶏の砂袋を鶏内金といいます。
綺麗な黄金色なので、鶏内金と言います。
鶏の砂袋はとても強靱で、何でも消化してしまいます。
この事から、硬いものでも何でも、軟らかくしたり、砕いたりすると考えます。
硬いものを砕く作用としては穿山甲と同じですが、穿山甲は希少動物です。
ですから今は中国では鶏内金がよく使われます。
日本では医薬品ではなく、健康食品になっていますから使いやすいものです。
消導作用(消化を助ける作用)もありますが、軟堅作用がとても良いものです。
血糖を下げる作用もあります。

鹿角霜

日本では殆ど使われませんが、鹿角霜という生薬があります。
本来は、鹿の角である鹿角を地面に半年とか1年くらい埋めて、土壌の菌で少し腐食させてから使います。
このようにする事で、通常の鹿角よりも分解されやすくなるものと思います。
ただ、現在の中国で使われている鹿角霜は、殆どが鹿角から鹿角膠を採取した残渣になります。
このような鹿角霜は、本当の鹿角霜よりも効き目は格段に落ちます。
ただ、価格も格段に安いので、資源の利用としては価値があると思います。
出来ればこの2つを明確に区別する為に、呼び名を変える方が良いでしょうね。
といっても、本物の鹿角霜は今は中国でも殆ど手に入れるのは難しいと思います。

乾姜と生姜

「しょうが」は代表的な漢方薬ですか、その使い方によって効能が異なります。
また、日本と中国で製法も違い、名称も異なりますから、とても注意が必要です。
まず中国の場合です。
 生姜 しょうきょう  生の乾燥していない「しょうが」です。生のものを購入してスライスして、煎じ薬に入れます。
            温める作用はあまり強くなく、発散作用と、吐き気止めの作用があります。
            葛根湯や桂枝湯によく使われています。
 乾姜 かんきょう   生姜を乾燥させたもの。温める力が強くなり、胃腸を温めたり、止血作用もあります。

日本の場合
 生姜 しょうきょう  日本で生薬の生姜を購入すると、乾燥したもの、つまり中国の乾姜と同じものです。温める作用は強いですが、発散される作用は殆どありませんから、本来生姜を使う所に日本の生姜を使うのは誤りです。
 乾姜 かんきょう   しょうがを乾燥させて、蒸したもの。中国ではこのようなものはありません。ですので、中医学的な作用は不明です。

炮製について

生薬を加工する事を炮製といいます。
炮製によって、毒をのぞいたり、効き目をよくしたりします。

「鮮」 生薬そのものを乾燥させないで、冷蔵庫に保管したもの。野菜と同じ保存。
  例 鮮地黄(せんじおう) 生地黄より涼血作用が強くなります。
「生」 生薬を加工せず、乾燥させて刻んだもの。
「熟」 多くは蒸したもの。酒をつかって蒸す事が多い。
  例 熟地黄 熟田七  生のものより補う力がつよくなります。
「炙」 炙る。本来は、生薬を直接火にかざします。焦げないように表面にハチミツや酒などの液体をつけます。スッポンの血を使う事も。イメージとしては北京ダックのイメージです。ただ、今は鍋などに入れて炒める場合もあります。
 例 別血柴胡  すっぽんの血で炮製する事で、柴胡の発散作用を弱めまず。吐血などの場合に使われます。
「炒」 素焼きの鉢などで火を通します。フスマなど固形物を入れて一緒に炒める場合もあります。
「炮」 附子など毒性を取り除くため、高温の灰の中に長くうずめて、毒を分解する方法。

現代は炙と炒の区別があいまいになってしまっていますが、炙は液体をしみ込ませる、炒はそのまま、または固形物と一緒に炒ると理解して下さい。

さて、ここで例外があります。
それは、前回出て来た「しょうが」です。
中国の生姜(しょうきょう)は、乾燥していないものですから、本来は「鮮生姜」または「鮮姜」と呼ぶべきです。
また乾姜は乾燥させただけですから、「生姜」と呼ぶべきです。
このあたりが混乱を招いた原因と思います。
8月 26th, 2010
生薬を加工する事を炮製といいます。
炮製によって、毒をのぞいたり、効き目をよくしたりします。

「鮮」 生薬そのものを乾燥させないで、冷蔵庫に保管したもの。野菜と同じ保存。
  例 鮮地黄(せんじおう) 生地黄より涼血作用が強くなります。
「生」 生薬を加工せず、乾燥させて刻んだもの。
「熟」 多くは蒸したもの。酒をつかって蒸す事が多い。
  例 熟地黄 熟田七  生のものより補う力がつよくなります。
「炙」 炙る。本来は、生薬を直接火にかざします。焦げないように表面にハチミツや酒などの液体をつけます。スッポンの血を使う事も。イメージとしては北京ダックのイメージです。ただ、今は鍋などに入れて炒める場合もあります。
 例 別血柴胡  すっぽんの血で炮製する事で、柴胡の発散作用を弱めまず。吐血などの場合に使われます。
「炒」 素焼きの鉢などで火を通します。フスマなど固形物を入れて一緒に炒める場合もあります。
「炮」 附子など毒性を取り除くため、高温の灰の中に長くうずめて、毒を分解する方法。

現代は炙と炒の区別があいまいになってしまっていますが、炙は液体をしみ込ませる、炒はそのまま、または固形物と一緒に炒ると理解して下さい。

さて、ここで例外があります。
それは、前回出て来た「しょうが」です。
中国の生姜(しょうきょう)は、乾燥していないものですから、本来は「鮮生姜」または「鮮姜」と呼ぶべきです。
また乾姜は乾燥させただけですから、「生姜」と呼ぶべきです。
このあたりが混乱を招いた原因と思います。

上昇気流と下降気流

清代の名医、張錫純は、著書の中で面白い事を言っています。
黄耆は温性で上に昇る性質がある。
知母は凉性で下に降りる性質がある。
例えれば、黄耆は上昇気流で、知母は下降気流になる。
上昇気流と下降気流があわさると雨になる。
これと同じように、黄耆と知母をあわせると、体を潤す事が出来る。
ちょっと屁理屈っぽいのですが、張錫純はという人は、それで沢山の患者さんを治しているのですからすごいです。

甘草の働き

甘草は、非常に多くの漢方処方に配合されています。
その作用は、沢山ありますが、「伏火」の作用というものがあります。
伏火とは、例えば灰の中に火を埋めておくと、燃え尽きるまで長い時間がかかります。
これは酸素が少しずつしか供給されないため、一度に燃えあがらないからです。
もし空気中に火を置くと、大きなな炎となり、火はあっという間に燃え尽きてしまいます。
これと同じように甘草は、附子、乾姜の熱薬が一気に燃えるのでなく、少しずつ燃えるようにして火の力を永く続かせる働きがあると考えます。
甘草のこの作用を伏火といいます。

莪朮の働き

莪朮という植物の根っこがあります。
「中薬学 医歯薬出版社」によれば、莪朮の作用は
1.気滞血瘀による腹腔内腫瘤、無月経、月経痛あるいは産後瘀阻の腹痛に三稜、川きゅうなどと用いる
2.飲食停滞による胸腹部の痞え、腹張、腹満、悪心、嘔吐などに三稜、青皮、麦芽などと用いる
となっています。
つまり、気と血の流れを良くする作用と、つまったものを流す作用があると言えます。

ただ、不思議な事に莪朮は、日本では胃の薬、または健康食品として販売されています。
これは恐らく、昔からの胃の薬として恵命我神散というのがあり、それの主成分が莪朮だったからと思われます。
中国の中医師が莪朮を胃腸薬として使うというととてもびっくりされます。
莪朮には補気や補血などの補う作用はありません。
ですから、本当の胃弱には効果がありません。
ただ、食滞などの荷物を軽くしてあげる事で機能が回復しやすくなる事はあります。

血肉有情

中医学をやっていると、時々、「血肉有情」という言葉を聞きます。
血肉有情とは、簡単に言えば動物生薬の意味です。
動物生薬にも、補うものと、体を綺麗にするものがありますが、血肉有情という言葉は補う場合によく使われます。
その代表が鹿茸です。
それ以外には、海馬とか、紫河車などがあります。
こういった動物生薬は、腎精を補う作用がとても良いものです。
腎精は、先天の精とも言われ、人は生まれつき持っているものです。
そして年令とともに少しずつ消耗していきます。
中医学は、腎精が少なくなる事が老化の意味とほぼ同じです。
つまり腎精は命のろうそくのようなもの。
ですから、腎精を補うというのは、簡単には行かない事です。
手当たり次第に血肉有情の動物生薬を飲めば寿命が延びるという訳にもいきません。
腎精は寿命以外に妊娠や生殖とかかわってきます。
ですから、不妊症の場合は血肉有情のものはよく使われます。
ただ、原料が高いので、価格も高いのが残念です。

生薬の不思議

中医学には、すこし屁理屈っぽい理論があります。
たとえば、胡桃(くるみ)
くるみの形は、腎臓に似ています。
ですので、腎を補う働きがあります。
また、脳にも似ています。
ですから健脳の働きがあります。
なんとなくうさんくさいですが、中医学的にはそのように考えられています。
また、紅花やサフラン、玖瑰花、月季花など赤い色の花はたいてい血を綺麗にする働きがあります。
とても不思議ですが、実際に効果があります。

処方の性質

中医の処方の性質について言えば、大きく分けて
 1.補瀉
  足りないものは何が足りないか判断してそれを補う、余分なものは何が余分かを判断してそれを綺麗にする
 2.熱寒
  冷えている時は温める、熱があれば冷やす
 3.方向性
  発散させる、収斂させる、上げる、下ろすなど
 4.定位
  どの部分での問題なのか
などがあります。

人参

人参というと、普通思い浮かぶのがあの野菜の赤い人参です。
中医学での人参はいわゆる朝鮮人参です。
人参は補気の代表薬です。
ただ、漢の時代の書物の傷寒論の中では人参はみぞおちが使える場合や狭心症のような状態で胸がつかえる場合にも使われています。
今の人参は甘味が多く、補う力はとても良いのですが、通す力がありません。
昔の人参は今の人参と種類が違ったという説があります。
また長い間栽培されていく間に性質が変わったとも言われています。
昔の人参は、今の人参よりも竹節人参や田七人參に近い性質も持ち合わせていたのではないかと思います。
張錫純は昔の人参は今の党参だと言っています。この説は少し無理があるようにも思います。

修治について

昔から漢方薬には修治(しゅうち)という概念があります。
たとえば、黄耆をハチミツにつけて炙るとか、地黄をお酒に漬けるなどです。
修治にこだわる人と、あまりこだわらない人があります。
張錫純は、「附子などの毒性のあるものを修治するのは必要だが、それ以外のものは修治する必要は無いし、修治する事によって効果は弱くなる」と言っています。
日本の場合、薬事法の関係で自由な修治が出来ません。
その為、エキス剤などでも修治されたものを使う事は極めて少ない状態です。

東洋薬行の「東洋八味地黄丸」は、珍しく修治した熟地黄を使っています。
熟地黄は、地黄をお酒につけて乾かし、またお酒につけて乾かすという事を9回行って出来るものです。
このようにする事で、腎精を補う力が強くなります。

テレビなどである食材を調理するのに、調理の方法でうまみ成分が著しく変わるという事をよくとりあげています。
漢方の修治も良く似ていると思います。
ただ、煎じの場合は、最後に必ずお湯で煮込むという作業があります。
この為、せっかく修治しても、料理に比べてその差は出にくいと思われます。
丸薬などの場合は煮込まないので、修治の影響が大きくなります。
先ほどの東洋八味地黄丸も丸剤なので、修治の影響が大きいのだと思います。

銀翹解毒散

同じ風邪でも、身体があつく、熱っぽい感じ、身体を冷やしたい時などは銀翹散を使います。
銀翹散に清熱作用のよい羚羊角を加えたものが「銀翹解毒散」です。
「涼快楽」「天津感冒片」も同じ成分です。

とりあえず風邪薬としは葛根湯と銀翹解毒散を常備しておくと良いでしょう。
寒気が強い場合は葛根湯、熱っぽい感じが強い場合は銀翹解毒散という使い分けで良いと思います。

葛根湯の仲間達

葛根湯と同じように、身体を温め、発汗作用があるものとしては麻黄湯、小青竜湯があります。
違いは次のようになります。
 葛根湯 肩や首、背中の筋肉が硬くなっている
 麻黄湯 咳がある 患者が肺気を閉塞している
 小青竜湯 鼻水やサラサラの痰がある 

葛根湯

葛根湯は誰でも知っているとても有名な漢方薬です。
使い方のポイントとしては、寒気があるという事が大切です。
風邪でも熱っぽくて、汗が出て、クーラーにあたりたい感じの時は使わない事です。
使ってしまうともっと悪くなります。
葛根湯は、身体を温める作用と発汗作用があります。
その作用によって、体表の寒邪を発散させる作戦のものだからです。
また成分の麻黄はカフェインに似た興奮作用があります。
ですので、寝る前に飲むと眠れなくなったり、飲み過ぎるとドキドキしたりする事もあります。

薬草の成分

いつも考えている事なのですが、ある薬草には病気を治す成分が含まれています。
例えば麻黄にはエッフェドリンが含まれていて、発汗や止咳の作用があります。
ただ、麻黄が生育していく爲にエッフェドリンが必要という訳ではありません。
コーヒー豆にはカフェインが含まれています。
これもコーヒーにとってカフェイン必要という訳ではありません。
ただ、コーヒーはカフェインが含まれている事で、世界中で栽培されるようになりました。
つまり植物は他の動物に利用される爲に、わざわざ特殊な成分を含んでいると考えられます。
ある病気があると、それを治す植物が必ず近くにあると言われています。
このように生物は生態系として、お互いに助け合い、まるで地球が一つの生物のように活動しているのです。
不思議な事ですが、それが中医学の原点と言えます。

気と味

生薬において、気味という言葉を使う事があります。
気は陽に属し、味は陰に属します。
気は、香り、辛味、涼味など、主に揮発性の成分です。
味は苦味、塩からい、酸味など水溶性、もしくは不溶性の成分です。
気に属するものは陽に属し、厚いものと薄いものに分けられます。
 気が厚いものは純陽に属し体を温める作用があります。例えば乾姜などです。
 気が薄いものは陽中の陰で発散する作用があります。例えば麻黄とか薄荷です。
味に属するものは陰に属し
 味が厚いものは純陰で瀉下作用があります。例えば大黄などです。
 味が薄いものは陰中の陽で、通利作用があります。例えば沢瀉などです。

カエルの卵管

皆さん、こんにちは。
中国ではカエルの卵管が健康食品になっているのはご存知ですか?
ツバメの巣の料理はよくありますが、「雪蛤膏」とか「蛤士蟆油」と言う名前で売りだされています。
スープに混ぜて飲んだりもします。
かの西太后も愛用していたという事です。
美容には勿論良いのですが、漢方的には腎精を補う作用がとても良いものです。
今は日本では発売されてはいませんが、8月ころには発売される予定です。

抑肝散加陳皮半夏と加味逍遙散の違い

最近、よく質問されるのが抑肝散加陳皮半夏と加味逍遙散の違いです。
どちらも肝の気の流れを整える働きがありますが、少し作用が違っています。

この解説をする前にそれぞれの基になった処方、逍遥散と抑肝散で比べてみましょう。

共通する成分 柴胡 当帰 茯苓 白朮 甘草
逍遥散にたげ入っているもの 芍薬 薄荷
抑肝散にだけ入っているもの 川芎 釣藤

となり、かなり似通っています。
どちらも肝の働きを良くします。
肝は体は陰、用は陽といいます。
体とは肝臓そのもの、用はその働きです。
柴胡は気の流れをよくして肝の用の働きを良くします。
当帰は肝の体、特に肝血を補う作用が良いものです。
この2つで肝を補います。
肝の病気は脾に伝わります。
そこで脾を丈夫にする白朮、茯苓 甘草を加えてあります。
ここまでが共通部分です。
違うのは、芍薬、薄荷と川芎、釣藤です。
芍薬の働き 肝の血と陰を補う作用があります。 また収斂作用があります。
薄荷の働き 気の流れを良くします。 こもった熱を出す作用があります。 発散作用があります。
川芎    血の流れを改善します。血管を広げます。
釣藤    血管を広げます。 気の流れを良くして緊張を改善します。
この結果として
抑肝散は川芎、釣藤で血管を広げ血流を良くするので顏色が青い人に適しています。
逍遥散は潤いを与えたり、こもった熱をとる作用があります。
抑肝散は全体としては温める作用がかなりあります。
逍遥散は温める力は少しです。

逍遥散のこもった熱をとる力を強化するために山梔子と牡丹皮を加えたものが加味逍遙散です。
加味逍遙散は全体としては少し冷やす作用になります。
ではのでのぼせとかホットフラッシュに多用されています。
抑肝散加陳皮半夏は抑肝散に陳皮と半夏を加えたものです。
陳皮と半夏は痰湿をとる作用があります。
痰湿とは汚れた水や油、繊維などです。
茯苓、白朮にも痰湿をとる力がありますので、抑肝散も逍遥散もどちらも痰湿をとる作用がありますが
抑肝散加陳皮半夏はよりその力を強化しています。